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2008年を振り返って/2009年への期待
暫定版
 
   金子格 個人ホームページ http://www.it-aru.com/    
   


日記を書くほどまめではないが、何もせずに歳を重ねていけるほどほど潔くもないので、年に一度、前年の出来事のまとめと今年の展望を書いている。

これを他人が見ても多分あまり面白くないだろうが、お正月に暇な人などのために公開している。ちなみに、本人が見ると、「ああ、このころはこんな事を考えていたのだなぁ」などと思い出されて結構面白いものである。

といってもだいたい毎年元旦には完成した例しがない。今年も年末に風邪を引いたり、旅行先のネット接続の調子が悪かったりして、未完成のまま新年を迎えてしまった。というわけで例年とおり1月1日に暫定版を「うぷ」し、その後暫時追記している。別記なきものは1月1日掲載である。

2008年を振り返って

世界
サブプライム危機
原油高騰と暴落
IT
Microsoftの底力
個人的には
海外講義デビュー
今年はまったり日本で

  2009年への期待

世界
サブプライム危機を越えて
その他
 
大学の国際化


・サブプライム危機

サブプライム問題は大きな影響を及ぼした。これを全くの予想外と言うのは正直ではない。米国を中心に信用の過度の膨張があると、だれしもうすうす懸念していたはずだ。
どちらかというと、思ったよりもバブルがなかなかはじけないので、自分だけ弱気の投資ポジションをとる「勇気」がなかったといったところだろう。と、いうわけで、損失を被った投資家は(私もだけれども)自業自得ではないかと思う。
サブプライムの元凶とされたCDS自体は、決して悪い考えではないように思える。問題は、CDSの本来の役割を果たせる制度になっていなかったことだ。冷静に問題を直視し、正すべき点が正されるといいのだが。どうも最近は事故がおこると見当違いの対策がされる傾向があるので少し心配だ。本来の問題点が解消され、金融システムが早期に安定することを願う。
 
・原油の高騰と暴落

あれよあれよという間に1バレル140ドル。しかし、これも長続きしないのではという予感は多少はあっただろう。なにしろこの高値では原発の建設費も5年程度で回収でき、ほとんどありとあらゆる代替エネルギーが採算ラインにのってしまう。高性能の二次電池が実用化されている今、電力よりも高い価格が続くことは競争原理の面から考えにくい。冷静に考えればわかることも、慌てているとわからないということか。

 

・Microsoftの底力

近頃、派手なニュースこそないマイクロソフトだが、本当に影響力が低下しただろうか。私はむしろその実力はむしろ増大していると思う。サーバー分野での非マイクロソフトOSのシェアは40%を下回った。かつてシェア60%を越えると、急速に独占状態が実現し、容易にはその独占は変わらない。サーバーもWindowsが天かを取ったということだ。残るはモバイルとゲームだが、これもマイクロソフトのシェア切り崩しがすでに始まっている。

むしろ、今マイクロソフトの最大の脅威は、「強大すぎて競争不能」とされ「分割」されることだろう。であるならば、最も重要なのは、「あまり儲かっているように」見えないことと、「圧倒的に強いように」見えないこと。マイクロソフトが目立たないのは、逆PR戦略が成功しているためだけかもしれない。

・今年はまったり日本で

こんなに円高になったので、ぜひにでも年末は海外で過ごしたいところだが、今年は国内。都子さんがパスポート切れで更新しないから。都子さーんパスポート取ってよ。

・海外の講義デビュー

タンペレ大学で講義してきました。初の海外講義でめちゃくちゃ緊張した。これで度胸もついたので、そのうち他の大学でも、と思うが、他でお呼びがかかることはないかな。

・サブプライム危機を越えて

CDSというのは、本来は金融を安定させるための仕組みである。本来の目的通りに運用されれば優れたシステムであることがわかる。問題は、情報の透明性に欠け、不正の温床になっていたことだ。

どんな優れたシステムでも、運用の透明性や、信頼性がなければ、信用を創出することにならない。金融システムの問題は、事故が起きて始めて欠陥が判るという、品質保証システムの脆弱さにあるように思う。建築物も、実際に地震が起きるまでその耐久性はわからないわけであるが、地方で発生した過去の何回かの震災では、比較的新しい建築物はその安全性を実証することができた。また、最近では建築後に強度を測定する方法も整備されてきている。金融システムにも、本来は「破壊」せずに安全性を確保する仕組みが必要だ。
もう一つの大きな問題は、全体的な信用が揺らいだ時に加速度的に信用が収縮する問題である。この「ポジティブフィードバック」が是正されない限り、経済が安定化することはない。それほど複雑な問題ではないので、素人的にはなぜ安定かつ効率的な経済システムが構築できないのか、不思議でならない。

・大学の国際化

タンペレの大学で、「フィンランドの人手をあげてー」とやったら、地元学生は1名のみ。「大学の国際化」というのは本当はおかしくて、universityという語源の通り、大学とは本来内外から優秀な教員、学生を集める施設だ。日本人学生と日本人教員ばかりの日本の大学がへんなのである。G7平均で、大卒者就職者中の外国人は平均15%である。教員は50%程度が外国人ではないか。
しかし、日本の国際化はすでに大きく進んだ。海外企業と比べ遅れているとはいえ、日本企業の国際化もかなり進んでいる。工業製品、資源などはいうまでもなく、海外に大きく依存している。人材面でも、日本企業は、すでに海外からの優秀な人材に頼らざるを得ない。海外の学生の日本企業への就職意欲も高い。日本人だから日本企業で働ける、という時代ではもうないのである。
惰性で続いたことには、安定しているようで、実体は薄皮一枚の上に乗っていた、ということがよくある。これだけ周辺の状況が大学の国際化を求める状況になれば、大学の国際化も意外と雪崩をうって進むかも。