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2004年を振り返って/2005年への期待
暫定版
 
   金子格 個人ホームページ http://www.it-aru.com/    
   


日記を書くほどまめではないが、何もせずに歳を重ねていけるほどほど潔くもないので、年に一度、前年の出来事のまとめと今年の展望を書いている。

これを他人が見ても多分あまり面白くないだろうが、お正月に暇な人などのために公開している。ちなみに、本人が見ると、「ああ、このころはこんな事を考えていたのだなぁ」などと思い出されて結構面白いものである。

といってもだいたい毎年元旦には完成した例しがない。今年も年末に風邪を引いたり、旅行先のネット接続の調子が悪かったりして、未完成のまま新年を迎えてしまった。というわけで例年とおり1月1日に暫定版を「うぷ」し、その後暫時追記している。別記なきものは1月1日掲載である。

2004年を振り返って

世界
津波被害
グローバル素材インフレ
IT
iPod大躍進
NHKがんばれ
個人的には
当家の近況
・今年はアムステルダム
  2005年への期待

世界
新通貨
その他
 
・大学の将来


・津波被害

今年は正月休暇をオランダ・アムステルダムで過ごしているが、こちらでも各テレビ局がこのニュースをトップで報じている。被害の全貌が判明するにはまだ時間がかかりそうだが、20世紀以後最大の惨事になるかもしれない。残念なことは地震の発生確率、津波の発生確率、被害の規模、どれをとってもある程度は予想できたにもかかわらず、とりえた対策がとられていなかったことだ。警報さえあればあと幾分かの生命が救えたように思われる。津波の発生頻度が仮に1000年に1度としても、被災された地域の方にとって、ある程度の対策を取るに相当する脅威であったことは間違いない。めったに来ない巨大災害の危険は過小評価される傾向がある。
一方で情報技術の進歩は、敏速な国際援助に結びついていることは幾分かの救いだ。世界中どこにいてもオンラインで緊急援助のための募金を行うことができる。
 
・グローバル素材インフレ

このコーナーでグローバルデフレの到来について記してからわずか2年。すでに世界はグローバル素材インフレに突入した。個人的には各企業がどのようなデフレ対策を取ったかに関心を持っている。デフレ対策として、素材、製品価格の変動に強いフレキシブルな生産体制を構築すれば、デフレにもインフレにも強い体質となる。これに対し、製品、材料価格の低下を前提に全資産に対しショートのポジションを取るのは、デフレに賭ける投機であり、インフレ局面で大きな損失を被る。

 

・iPod大躍進

ようやくiPodのような「デジタル機器らしい」製品が出てくるようになった。iPodの仕様は、5年前に総務省の補助金申請で企画した音楽再生機器とほぼ同じ。こういう製品が売れることは自明であり、不思議なのはなぜ日本企業が真っ先にこういう製品を企画しようとしないかということだろう。ラジオ、ウォークマン、ビデオ、CDと消費者が求める製品をいち早く実現してきた日本企業の目が曇ってきていないかちょっと心配。
最終製品を企画するよりも、部品分野の方が利益があげやすく差別化しやすいという意見があるが、それは違うと思う。利用者に接する最終製品を手がけていてこそ、次世代に重要となる基本モジュールの技術が蓄積できる。今後重要となるコンテンツのデジタル的なパッケージ化技術など、盲点がないか心配だ。
・NHKがんばれ

えっと、私はNHKジャンキーで、NHKが無いと生きていけない。もちろん受信料だって一度もごまかしたことがない。NHKが米国PBSみたいな寄付制だったら受信料以上に寄付しちゃいそうなくらいだ。そのNHKが大きく揺れた一年だった。
僕は、このことはNHKにとって非常に良かったと思う。欠点が何もないように繕って、うまくいっているように見せている組織ほど、脆いものはない。今後数年のうち、放送メディアは、デジタル化という大きな渦に巻き込まれる。デジタル放送などは変革の中の一過程でしかない。数年後にはほぼすべての情報機器が放送機能を備えてしまい、放送事業は通信システムの一応用プログラムでしかなくなる。電話サービスがビジネスモデルから消えたように、放送サービスも、膨大なデジタルサービスの一モードとして埋没する運命にあるわけだ。いまのうちにきちんとどたばたして、今後の変革の時代を乗り切れる風通しのよい柔軟な組織を作ってほしい。(2005.1.17追記)

 

・当家の近況

えー毎度ですが、おかげさまで当家(2人しかいませんが)は平穏無事な新年を迎えることができた。親戚関係も金子家、奥田両家の両親とも大きな病気もなくなによりだ。姪っ子は一人は小学校高学年、一人はもうちょいで保育園か。
実家の方の通信環境はダイヤルアップからADSLにアップグレード。母とのメールは週1回が2回に増えた。父はなかなかメールをくれないが、パソコンはなかなか上手に使いこなしている。

 

・今年はアムステルダム

今年の正月休みはオランダ・アムステルダムで過ごしている[写真]。ユーロが高いが、まだまだ円も高いのでそれほど物価が高いとは感じない。宿はアムステルダムZuid駅近くDelphi Hotelだが、なかなかよい宿だ。アムステルダムZuid駅にはトラムで数分だし、ゴッホ美術館や国立美術館にも近い。部屋もそこそこ広くて朝食もおいしいので奥様も大満足であった。アムステルダム観光を計画している人にはお勧めだ。
フェルメール、ゴッホを堪能したが、レンブラントの絵画を通じて見るオランダの歴史が興味深かった。大航海による国際化の波にのり大発展を遂げたオランダと、IT技術に沸く現代には多くの共通点が見いだせる。
 
・新通貨

というわけで、新通貨が話題だ。ドル、ユーロ、円をミックスした通貨を作り、アジア共通通貨に発展させようという案があるそうだ。しかしよく考えてみると、通貨間での安定とともに、通貨としての価値の安定も重要なわけで、通貨をmixしただけではあまり新たな通貨としての価値はなさそうに思える。一歩進んで産業上重要な品目の価格にリンクした通貨ができれば理想的ではないか。以前このコーナーでも述べたように、今日のIT技術を活用すれば、石油や鉄鋼、サービス価格をベースにした通貨だって、設計可能だ。その方が実用的じゃない?
・大学の将来

今年から大学関係者になったので関心を持つようになった。そこで印象がフレッシュなうちに大学をとりまく状況についての感想を書いておこう。
大学関係者の多くは「少子化」->(*)「競争率低下」->「偏差値低下」->「人気の低下」->(*)へ戻る、という少子化から始まる負のフィードバックを恐れている。しかし他産業における変化を見ると、少子化以外の課題の方が重要ではないかと思える。
少子化は需要が10年かけて半分になるというようなおだやかな変化だ。他産業では銀行、流通、通信のようにIT化とグローバル化により全く環境が変わってしまった例が少なくない。大学の中にもIT技術を応用し従来の1/3の授業料で学位がとれたり、授業の品質をリアルタイムに評価し、高品質化を目指している大学がある。海外の大学の日本進出も激しい。学生が就職する産業界では海外へのアウトソーシングがあたりまえになり、求める人材も激変した。
つまり、今後大学関係者が考えるべきは、少子化による市場の漸進的な縮小に耐えられるか否かではなく、今後求められる新しい大学の役割をどうしたら提供できるかだろう。
まぁ、大学は人件費率が90%程度と、基本的には「人手サービス」的な部分が大きいから意外と大きく変わることなく続くかもしれないが、なかなか緊張感のある環境だと思っている。(2005.1.21追記)